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スターライトラテを真剣に見つめるボブを、カフェのお客さんがスマホで撮影する
話題になったのは、ラテより真剣な顔。

BOB · 約3分

新作ラテアートとSNS事件

夜のナイトオウルカフェ。

ボブはカウンターにひじをつき、ラテの上に最後の星を描いていた。夜空みたいな一杯を作りたくて、ミルクを注いでは、何度も首をかしげる。気づけば、眉間に小さなシワが寄っていた。

「……よし。今度こそ、いい夜空だ」 そこへ、常連のキャロルがやって来た。「それ、新作? 写真を撮ってもいい?」。ボブは少し照れながら、カップを前に差し出した。

キャロルはラテと、その向こうでまだ星の形を確かめているボブを一緒に撮った。「顔も写ってるけど、この写真、載せていい?」。「いいけど、主役はラテだからね」。ボブは念を押したつもりだった。

数分後、キャロルのスマホが小さく震えた。「『夜空の芸術家』だって」。ボブは耳をぴくりと動かした。「ラテのこと?」。「ううん。ボブのこと」

画面には、星の浮かぶカップと、それを人生でいちばん大事なものみたいに見つめる自分の顔があった。『職人の顔』『この真剣さ、好き』。ボブはカップの陰に少しだけ顔を隠した。

「そんなに難しい顔、してた?」 「してた。でも、喜んでもらおうとしてるのが伝わるよ」 そう言われると、ボブはそれ以上、何も言えなかった。

その夜は、いつもより少し賑やかだった。「芸術家のラテをひとつ」と注文されるたび、ボブはため息をつくふりをして、丁寧に星を描いた。飲み終えたお客さんの笑顔を見ると、口元だけはどうしても緩んでしまう。

閉店後、キャロルが小さなチョコクッキーを差し入れた。ボブは『ダイエットは明日から』と書いたメモを裏返し、コーヒーの隣に一枚だけ置いた。今日いちばん真剣な顔になったのは、その一枚を半分にするかどうか考えている時だった。